震災と原発事故が、何が大切を教えてくれたと言えば、私にとって、人の命、そして普通に暮らすことがいかに大事かということだ。幸せは、当たり前の生活の中にある。震災後、家族が引き裂かれ、二重生活したことは忘れられない。

 えんどう豆のTさんの旦那さんは市役所職員で、奥さんと子どもを避難させた。残った旦那さんは、防災の担当部署で対応に追われ、疲れ果てていたと聞く。そして緊急時避難準備区域だったけれど、病院、学校が再開されると、南相馬に戻ってきた。避難先の福島市の方が、放射線量が高かったからかもしれないが、家族で共に暮らすことを選んだ。

 いつだったか、福島で活動しているシンガーソングライター「ave」の「福の歌」歌に勇気づけられたと聞いた。「誰かのせいにすれば容易いことを、自分のせいにして立ち上がろう」というフレーズが、南相馬に戻ることを、後押ししてくれたそうだ。福島県から約6万人が避難し、南相馬では半数の子どもがいない。それでも、南相馬で生活をする事を選び、幸せに暮らそうとしている人はいる。私は、どちらの選択も尊重する。

 今、彼女は、南相馬に戻り、えんどう豆でファクトリーの窓口として働いている。実は、私よりもキャリアはあって、利用者と共にある彼女の姿勢を、私は尊敬している。震災後、稟として、潔い覚悟のようなものを感じるのは、私だけであろうか。

Photo by ザルツ